日本に古くから伝わる「和紙」とは、楮(コウゾ)三椏(ミツマタ)雁皮(ガンピ)といった植物の白皮部分から取り出した靭皮繊維(じんぴせんい)を主原料として、手で漉かれたものです。
その繊維1本1本は、長く、強く、しなやかなため、木の幹を砕いて作られる木材パルプを主原料とした洋紙とは性質が大きく異なります。
現在は機械で抄造(しょうぞう)された和風の紙や、よく似た風合いの異素材が「和紙」として数多く流通していますが、実はいずれも本来の意味からすると和紙ではなかったはずです。正確な分類があるわけではありませんが、残念ながら多くの人々が手で漉かれていると思って購入される和紙のほとんどがそうではありません。←こちらもクリック
和紙はひとくくりに見られがちな素材ですが、実は非常に多様多種です。その特徴は、原料となる植物や、処理工程の 違い、また産地ごとの風土や伝承技術によっても大きく異なります。美濃和紙の歴史はとりわけ古く、正倉院に保存されている資料にも使用されており、1300年以上に渡り受け継がれています。
古くより最上級の障子紙産地として栄えた美濃の和紙作りは、職人が各工程に多くの手間をかけ、原料となる植物の皮を精製していくことで、天然繊維の特徴を最大限に引き出します。そうした原料を用い1枚1枚丹念に流し漉きの製法で漉きあげることで、繊細かつ強靭、ムラのない美しい紙を作り上げることができるのです。